有名ドラマ主人公のモデルのお店で
秋は銀座でおいしいご飯と焼き魚だよ
寺尾妙子
(てらおたえこ)

間口は狭いが中は広い。看板自体は分かりづらいが、表に定食の価格表が出てるから比較的入りやすいかも。
「このおかみに逢わなかったら あの『ドラマ』は生まれなかった」(橋田壽賀子)
なんてキャッチ付きの本が売られているこの店は、山形県上山温泉の「古窯」の東京店。ちなみに『ドラマ』とは平成4年に放送されたNHKの朝ドラ「おんなは度胸」。桜井幸子が藤山直美にイジメられたりしながらも温泉旅館の女将として立派に成長していくっていう、アレね。
で、その主人公のモデルであり、本の著者でもある元女将の佐藤幸子さんは今では旅館を息子さんに任せて、「会長」として東京のお
店と山形を行ったり来たり。とても精力的な女 |
性だが、柔らかい物腰と細かな気配りはさすが、お手本として見習わなくてはという気にさせられる。

半個室あり、カウンターありの高級店仕様。本店の旅館も全国でトップクラスの名旅館です。
お昼は山形牛をじっくり煮込んだ「和風ビーフシチュー定食」(1,200円)やとろーり温泉卵付きの「山形牛すきやき重」(2,000円)も捨てがたいけど、秋はやっぱり「焼き魚定食」(1,400円)でキマリだ。魚は週替わりでサバ、秋鮭などがこれから出てくるみたいだけど、私がいただいたのはサンマ。今年は豊漁で脂が乗ってよく締まった身は内臓までふっくらと焼き上がって絶品!
これにまた、ご飯がよく合うことといったら!
会長のこだわりで、お米は1日おきに山形から届く、精米したての「どまんなか」を使用。ツヤツヤ光って粘りのあるご飯は、ひと口食べると思わず「お母さーん」なんて泣きそうになるほどおいしい。 |
そして、山形県人のソウルフードである「いも煮」。「山形では、いも煮すっぺか、のひと声で河原に人が集まるんですよ。まあ、東京で言う花見みたいなもんですよ。ハハハ」(料理長談)。薄味汁ダクの里芋と山形牛の煮物と思ってください。これもおいしくて、やんまがだに一度いぎでぇ(山形に行きたい)気分になりました。

いも煮の里芋も牛肉も本当に素材が吟味されていておいしい。珍しいサクランボのお漬け物も山形名物。
夢中で食べて、ふと気付いた箸袋がまたスゴイ。各界著名人の一言付きサインが印刷されている。しかも、その顔ぶれたるや濃厚である。「すごいよ、デヴィ夫人だって」と私が興奮すれば、一緒に行った友だちは「ええっ!?
私のは石原裕次郎だよ」。なんでも、旅館に宿泊された著名人による楽焼の作品を印刷したものらしいけど、全部で7種類もあるという。7色の箸袋からお客様同士の会話のきっかけになれば、という心配りゆえらしい。
うーむ、深い。そして濃い。味もさることながら、おもてなし道って深くて濃いんだなぁ。箸袋7色制覇のためだけにでも通ってしまいそう。そんな不思議な磁力がこの店にはある。 |